腹話術愛好者たち
関係者のコメント
池田 武志
JVA 日本腹話術師協会代表
Japan Ventriloquism Arts
(旧・NPO法人日本腹話術師協会)創立者
NPO法人格取得の翌月(2001年11月)から、2019年10月までの間、国立オリンピック青少年総合センター大・小ホール他、東久留米市民ホール、山梨文学館、国立女性教育会館等々の会場において、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、インド、カナダなどからの素敵な一流プロ腹話術師たちを招いて、国際交流フェスティバルを16回開催しました。そして6149名の方々に腹話術を楽しんでもらったことになります。
出席者は沖縄から北海道、台湾、カナダなど全国から腹話術愛好者が参加し、専門的な腹話術の研修と親睦交流、そして各国の国際プロショーを楽しみました。
参加した海外メンバーは、合計102名、第1回目から10回参加のバディ・ビッグマウンティン氏やジュディ・ブッシさんの6回に続き、2013年は4回目参加のウェンディ・モーガンさん(2018年昇天)など多くの方が複数回参加してくれました。また世界の二大腹話術組織を代表するマーク・ウェイド氏やヴァレンタイン・ヴォックス氏等も複数回来日して、日本の腹話術普及と技術向上に多大な貢献をしてくれました。
彼らの腹話術人生の集大成である「出版物」を通しての影響は計り知れないものです。原作者のバレンタイン・ボックス氏の「唇が動くのがわかるよ」やマーク・ウェイド氏の「腹話術のテクニック」の本を、早稲田大学清水教授(故人)の翻訳によって、日本語で読めるようにしてくださいました。本当に感謝です。次世代の方々もきっと喜んでくれると確信しています。
これまで海外メンバーの貴重な言葉を日本語に訳す働きを担ってくださった国際的通訳者ドクター・木下氏や信常幸恵氏の見事な通訳に感謝しています。また安原篤子氏は、空港出迎えから観光案内まで、私の手足としてサポートしてくれました。
更に国際祭典の仕込みから片づけまで、腹話術愛好者の会チャターズ(1999年設立)の仲間たちが手伝ってくれたおかげで、滞りなく進めることができました。
新生日本腹話術師協会スタートにあたり、これらの方々のご協力に心から感謝します。
2023年4月1日より新たにJVA(Japan Ventriloquism Arts )日本腹話術師協会として、正式に再スタートいたします。これまでのご協力に対し心から感謝申し上げますとともに、引き続きご支援ご協力を賜りたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
初心で再出発
青春時代の私が自分探しの果てに二十歳でたどり着いたのは、演劇の世界でした。貧乏生活を楽しみながらの舞台出演を繰り返し、マスコミの仕事では小さな役から主役と絡む大役まで事務所の仕事は一切文句を言わず取り組んできました。表現者としての仕事が大好きだったからです。その大好きな俳優の仕事も日本腹話術師協会創立とともに、テレビや映画の仕事からは遠らかざるを得ませんでした。つまりどんなに良い仕事が入っても、レッスン日と重なったり、ボランティア公演とぶつかった場合、すべて腹話術を優先してきたからです。
また国際祭典開催を決意してからは、ほぼ2年がかりで企画し、交渉し推進しなければなりませんでした。NPO法人格を取得してからは尚更のこと、日常の事務作業や義務付けられている年次総会の議案書つくりや、都への議事録提出及び法務局への書類提出など、大半は井澤元事務局長のおかげで何とか乗り越えてくる事が出来ました。法人のメリットは無く、義務や負担だけが増えてNPO法人格の返上となった事情もあります。
シガラミを超えて
2023年度からのJVA・日本腹話術師協会は、もっと伸び伸びと自由に取り組んで行こうと思っています。サポートして下さる方々を対象に、情報発信や国際的腹話術情報案内、更にこれまで手薄になっていた国内研修会なども充実させていくつもりでおります。これまでJVAの年会費として3000円をいただき、JVAニュースレター等の郵送事務経費の一部に渇させていただいておりました。
新制・日本腹話術師協会 <JVA Ventriloqism Arts>では、これまでのような義務的な年会費は不要とし個人の自由支援金を活動源に続けてまいります。そして今後もJVAと関わり、メールやズームなどを通しての「Q&A」「ズームレッスン(個人・グループ)」「腹話術教材提供」等々を行ってまいります。(要登録料年1000円)
支援者の方々が、どのグループやサークル、団体などに所属していようと全く関係なく、同じ腹話術愛好者同志として対応して参ります。
私のミッションは、腹話術という素晴らしいツールを通して、様々な職業の方々がそれぞれ自分の専門分野に、自分の好みで、自分らしいやり方で活用して頂くことです。
腹話術の基本メソッド(習得方法論)は、誰でもが取り組めて誰でも楽しめて、誰でも楽しませてあげられる貴重な文化芸術・芸能です。だからこそ3000年もの時を経てもすたれず、多くの国で多くの人々に愛され続けているわけです。
地域貢献・社会貢献...次世代への貢献
腹話術愛好者の皆さま、ご自分の持ち味をもっともっと生かし、ご自分の地域でご自分のテリトリーで、腹話術を用いた活動を更に展開して参りましょう。そのためにも愛好者間の交流を進めると共に、またご自分のレベルアップの研修と共に、後輩の育成や地域での普及に取り組み、これまで習得したものを惜しげなく提供しましょう。
提供したからと云って自分の才能が無くなるものではありません。もし減ってきたら更に次のものを獲得しましょう。そのための場や情報を新JVAは更に提供して参ります。
そのためにも新JVAは世界の一流腹話術師たちとさらに交流を進めて、協力してもらおうと企画しています。そのために是非新JVAの活動を応援してください。
JVA・日本腹話術師協会の、新しい船出を、共々にお祝いし楽しい腹話術人生を過ごしましょう。
澤屋逸太郎
歴史の影に隠されてきた腹話術技能と日本腹話術師協会の役割
腹話術師・腹話術人形師 澤屋逸太郎【故人】
「腹話術は3000年も前から存在していた」とよく言われる。これは古代オリエントの残された遺跡に基づくものであるが、古代オリエント等と言われても日本に住む我々にとっては、遠い世界の夢物語としか思われない。魏志倭人伝の中に「卑弥呼は、鬼道を事とし、能く衆を惑わす」と書かれているが、鬼道とは超能力なのか、奇術なのか。呪術なのか分からないが、「衆を惑わす」とあるからには人が常識で理解できないような現象を見せていたのだろう。その中には言語に関する技能(腹話術技能)もあったであろうと想像される。卑弥呼がいたのは、三国志をはじめとする中国や韓国の古い記録によると西暦200~250年頃のことだと思うが、中国にはこの時代よりさらに数百年も前から幻戯(めくらまし)という芸能が存在していたという。これは今日で言う様々な芸能の総称つまり「雑技」と呼ばれるものだ。中国との交流があった卑弥呼は、幾つかの幻戯を知っていたであろうし、自分でも習得していただろうと想像してもおかしくはない。
さらに時代を過ぎて、西暦735年頃、奈良の政府は唐を真似て国の政治機構を作り替えたが、その時唐の皇帝が抱えていた散楽という芸能集団をそっくり取り入れ、今流に言えば国家公務員にしたという。正式には「治部省雅楽寮散楽戸」というのだそうで、約50年続いたと記録されている。散楽には音楽、舞楽、寸劇、物真似、曲芸、軽業、傀儡、奇術など今日のポピュラーな芸能が含まれていた。このようにあらゆる芸能が同じ建物の中で修行したということは、その後の芸能の在り方に大きな影響を与えたといえよう。この中には腹話術に関連する技能もあった事が容易に想像できる。
日本では、上手い下手は別にして、言葉を上手く話す、声色を変えて話す、唄を歌う等々は、走る、歩く、飛び上がる等と同様、当たり前に誰でもができる基本技能であって取り立てて「◯◯術」などと言わない根強い習慣が定着していたため、「腹話術」を表す言葉も70年ほど前迄は正式には存在しておらず、またそれだけを取り上げた記録も残っていないが、類似の技能は様々な形・様々な場に存在し、利用されてきたと思われる。
さらに、人形を伴って術者と話す現代腹話術のスタイルになってからは、まだ国内70年の歴史しかないが、今や現代腹話術の活用範囲は、単なる芸能の世界を越えてあらゆる分野に急速に広まってきており、腹話術技能の基本を一つにまとめていく組織活動がより必要になってきており、再編された日本腹話術師協会の役割はますます重要になってきているのだ。(病気療養中 でしたが2023年4月昇天)
松澤功雲(日本腹話術師協会副理事長)
腹話術師・JVA公認インストラクター、殺陣師)
新生・日本腹話術師協会の発足に際して、我々年輩者の出来る事。
NPOとして色々な活動の実績を踏まえ、新しい任意団体として新体制の発足をお祝い申し上げます。思うに、今後の当会の発展は、特に我々年配者の活躍如何による、と考えています。
誰もが知る様に、人の世は、無常世界であり生まれては死に、死んでは生まれ、一時もじっと留まってはいません。常に流転しているのは御承知の通りですが、特に近年大宮に来てからその感強くしています。と言うのも、この所、個人的にも孫が生まれる一方で、義母が寝たきりの入院状態になるなど、身近に世代交代の流れを意識せざるを得ない状況となった事、又、高齢者施設をボランティアに行く機会が増えて、この間、元気だった人が、数日後にはもうこの世に居なかったりするのを目の当たりに見れば、諸行無常を改めて感じるのも無理からぬと思う次第です。特に私をはじめとする年配の者は、最近、風邪を拗らせ肺炎になって、命を落とすケースが多いとの事を見聞きし、そこで、昨日、肺炎球菌の予防注射をしてきました。65歳を過ぎて、未だ予防注射をしていない人は、是非ともこの機会に予防のワクチン注射を受けて下さい。
自分の為、家族の為、世の為人の為です。
最初に腹話術と関係のない、予防注射の話をしましたが、実は当「新生・腹話術師協会」にしても、年配者が元気で活躍する事は、当会発展の為、是非とも必要な事だからです。
我々にとっても、腹話術の世界で元気で活躍できる事は、自身の生きがいや、ボケ防止に繋がりますし、健康管理の目的にも合致します。
昼間のテレビのドラマや歌番組等を見て下さい。我々と同年代の俳優さんや、歌手などの昔のスターがマダマダ元気で、若い人に負けぬ元気な活躍をしているのを見るにつけ、「よし、俺も、私も!」と思って悪い事はありません。大いに頑張って、若い者顔負けの活躍をしてやろうではありませんか! なあに、この頃の若い者は全くだらしがなくて、大した事ないのは皆さんも思い当たる、と思います。きっちり差をつけて、我々の実力を思い知らせてやろうではありませんか? なんですか? 若い人が聞いたら気分を壊すかも知れない、って言うんですか? なあに、構う事はありません。誰もが知る様に、この頃の若い者は、絶対に文句など言ってはきませんよ。何分にも、意気地が無い事、呆れるばかりで、とっくの昔に、腑が抜けているのですから。
山本 一男(日本腹話術師協会理事、埼玉大学教授・腹話術研究家)故人
やまもと先生の駆け足ベント・ヒストリー
山 本 一 男
はじめに
皆さんこんにちは。私は自称腹話術研究家でございまして、まだはじめに自称がついております。
私も腹話術を少し齧っておりますが、腹話術をやるに連れて腹話術に対する興味がますます湧いてきまして、周辺の色々な事柄をも調べたいという気持ちになりました。今日は、この2~3年の間自分なりに調べてみたことについて、お話しようと思っています。実はこういうお話をする機会というのはなかなか得られないものなのです。腹話術に関心のない人にとってはこういう話はまったく興味がありませんし、腹話術をやっている人でもパーフォーマンスに一生懸命で、周辺のことにまで興味を持つ人はそう多くはおりません。ですから、本日は自分が調べたことについて話を聞いていただけるということで、とても喜んでおります。
皆様は、腹話術の歴史についてどの程度御存じなのか分かりませんが、いろいろな人がおられると思います。バレンタイン・ボックスさんの書かれた「唇が動くのがわかるよ」という本がありますが、世界の腹話術の歴史については、ほとんどこの本に述べられています。また、3年ぐらい前に出版された「アザー・ボイス」という本にも、世界の腹話術の歴史について述べられています。これらの本は一回ぐらいさっと読んでも、なかなかその流れは分かりません。何回か読んでいるうちに、大きな流れがわかってきます。ここではこれらを整理して、概要をお話することにしましょう。(別紙)